地方での兼業・副業に交通費支援。2020年度から始まる新制度とは?

1月10日の日経新聞にて、2020年度に地方で副業・兼業をする人の交通費を一部支援する制度が開始されると発表がありました。

安倍政権の主要施策でもある地方創生。2014年に「まち・ひと・しごと創生本部」が発足し、2020年からは「東京一極集中を是正し、関係人口を創出する」を主軸に第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」が始まります。今回の交通費支援は、まさに第2期の取り組みを象徴するような制度になっています。

本記事では、今回の新制度で抑えたいポイントや制度ができた背景、世の中の反応などを解説していきます。

地方での兼業・副業促進。交通費の半額を国や地方自治体が助成。

改めて、1月10日に日経新聞で発表された内容はこちら。

政府は2020年度に、東京圏に住みながら地方で兼業や副業をする人に交通費を支援する制度を始める。20年度予算案に計上した1000億円の地方創生推進交付金を活用し、1人当たり年間50万円を上限に3年間で最大で150万円を支給する。交通費が往復で1万円を超える場合、国と地方自治体がその半分を兼業や副業先の企業に助成する。

主に東京と神奈川、埼玉、千葉の1都3県から他の地域へ兼業・副業として通勤する人を対象とする。1都3県の中でも交通の利便性が低い過疎地などへの通勤は対象に含める。

政府が兼業・副業の拡大を促す背景には東京一極集中に歯止めがかからない現状がある。東京圏の1都3県の転入者が転出者を上回る「転入超過」は18年に約13万6千人にのぼった。移住による地方の定住人口の増加は限界があるとみて、生活の拠点を東京圏に置きつつ地方と関わる「関係人口」の増加をめざす。

2020年1月10日 日経新聞(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54240660Z00C20A1PP8000/

本制度で抑えたい4つのポイント

1/21時点で申請方法などの詳細はまだ発表されていませんが、今回の記事から読み取れるポイントは以下の4点です。

  • 東京と神奈川、埼玉、千葉の1都3県から他の地域へ兼業・副業のために移動する人が対象
    (1都3県の中でも交通の利便性が低い過疎地の場合は対象)
  • 往復の交通費が1万円を超える場合、半分を支援
  • 条件を満たした場合、1人当たり年間50万円を上限に3年間で最大で150万円を支給
  • 交通費の支援先は、兼業・副業実践者ではなく、受け入れ先の企業

日経新聞に記事が上がった際、兼業・副業実践者に対して交通費の半額が支払われると解釈している方が多く見受けられましたが、正しくは兼業・副業実践者ではなく、受け入れ先の企業に対して国と地方自治体が半額を助成する制度です。

本制度の背景にある「東京一極集中」という課題

冒頭でも触れた通り、2014年9月3日に発足した第2次安倍改造内閣の閣議決定により「まち・ひと・しごと創生本部」が設置されました。少子高齢化や人口減少、東京一極集中といった日本が抱える大きな課題に対して本格的に取り組み、各地域がそれぞれの特徴を生かした持続可能な社会を作ることを目的とした「まち・ひと・しごと創生総合戦略」も策定されました。

「まち・ひと・しごと創生総合戦略」には第1期と第2期があり、第1期:2014〜2019年の第1では、2020年までに東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の人口の出入りを均衡させる目標を掲げたものの、その後も東京圏の人口集中は進み、2018年には1都3県の転入者が転出者を上回る「転入超過」は約13万6千人という結果に至りました。

政府はこれまでUIJターンや地域おこし協力隊等をはじめとした移住による地方の定住人口の増加を試みてきましたが、心理的・物理的ハードルが高い移住促進は限界を迎え、2020年までに東京一極集中を是正するという目標は達成できなかったのが現実です。

そこで、2020年から始まる第2期の総合戦略では、引き続き移住支援は続けながらも新たに「関係人口の拡大」を主要テーマに定め、その第一歩目の施策として今回の新制度が発表されました。

地方での兼業・副業に対する交通費支援。世の中の反応は?

本制度に対してSNSでは賛否両論の声が上がっています。

ポジティブな意見としては

  • 地方企業が東京圏の優秀な人材のノウハウを活用して事業拡大するチャンス
  • 地方へ人が流れ、地域にお金が落ちる良い循環が生まれる
  • 副業や多拠点生活など、新しい働き方が広がるきっかけになる
  • 地方から地方へ、地方から東京圏への流れも今後支援してほしい

その一方で、一部こんな懸念点を指摘する声も上がっています。

  • 東京圏の人材を副業で活用するイメージが沸いている企業はどのくらいあるのか。地方企業の社長次第。
  • 東京圏の人材に兼業、副業を通して地方のお金が流れるだけなので、地方に住んでいても稼げる仕組みづくりが必要
  • 補助がない状態ですでに成果を出している実践者がいる中で、無責任に地方に関わる人が増えるのではないか

また本制度について、各メディアでも取り上げられています。

◾︎一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会
https://blog.freelance-jp.org/20200110-6735

◾︎空家管理士協会
https://www.akiyakanrishi.org/archives/1446

◾︎KAYAKURA
https://kayakura.me/new-support-institution/#co-index-6

兼業・副業のミスマッチを防ぎ、地方企業の成長を加速させる新しい取り組み。

今回の制度からも読み取れる通り、関係人口創造における新しい切り口として、東京圏に住みながら地方で兼業・副業する新しいスタイルが提唱されています。

2018年は副業解禁元年と呼ばれ、副業・兼業の促進に関するガイドラインの策定やモデル就業規則の改定により大手企業が続々と副業を解禁。働き方改革の推進によりリモートワークやワーケーションといった新しい働き方の選択肢が増え、二拠点・多拠点居住といった新しい暮らし方も登場しました。

こういった時代背景の中で、新しい働き方・暮らし方の多様な選択肢の中から「自分らしさ」を模索する人が増え、一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会の調査によると、首都圏に住む会社員の8割が地方での兼業・副業に「興味あり」と回答しています。

その一方で、地方企業においては地元で条件に合う人材が採用できず、交通費や人件費、広告費やイベント出展費をかけて移住を伴う正社員採用に乗り出すものの、結果的にマッチする人材が見つからないというケースが発生しています。上手く採用できたとしても、その後の研修・教育体制の整備に時間がかかったり、希望していたスキルと違ったといったミスマッチが起きてしまう可能性もあります。

株式会社トレジャーフットでは、「新しい働き方を想像し、地場産業の未来を創る」というビジョンのもと、2019年4月より東京圏在住でスキルや経験のあるエキスパート人材を日本全国の地場産業へ業務委託で届ける「Going・Going・Local」という人材マッチングサービスを開始しました。経験豊富な外部人材を活用することで地場産業の課題を最短ルートで解決します。

Going・Going・Localの3つの特徴

1.正社員では雇用できないプロ人材にアプローチ可能
上場企業の役員や部長クラスをはじめ正社員雇用では決して出会えない人材に対して、
必要なときに、必要な期間だけ業務支援を依頼できます。

2.最小リスク・最小コストでスタート可能
採用コストや教育コストが発生しないため、リスクを少なくスタートできます。
柔軟な稼働頻度により、経験者採用よりも費用を抑えることができます。

3.事業のフェーズや課題の内容に合わせて人材選択・組合せが可能
創業期や成熟期、代替わり等の状況に合わせて必要な分野のプロ人材を活用できます。
エキスパート人材が策定した施策を、複業キャスト主導のもと、貴社社員や複業サポーターを組合せてプロジェクトの遂行も可能です。

Going・Going・Localの主要支援6部門

私たちの1番の強みは「地場産業特化型」。特に製造業にターゲットを絞ることで日本の製造業が抱える課題を抽出し、課題に対して多様な実績・知見のあるプロ人材を送り込み、製造業における課題解決のノウハウを体系化していきます。その中でも特に力を入れているのが次の6部門です。

  • 製造部門
    生産改善、品質改善、調達・購買、技術支援
  • 人事総務部門
    人事評価制度の構築・再構築、制度運用支援、採用・面接ノウハウ共有、管理者向け研修講師
  • 海外展開部門
    海外の販売先・代理店開拓、現地法人の立ち上げ、現地法人の採用・体制作り、行政機関との関係性構築
  • 営業部門
    大手企業キーマンの紹介、営業戦略の立案・実行、他社・市場・ニーズ調査、営業資料レビュー・改善
  • 管理部門
    予算管理強化とコスト削減、最適予算案の策定、社内体制・制度構築の指導、決算短期化
  • 経営部門
    中期経営計画、戦略策定、資金調達、管理体制強化

最後に

Going・Going・Localは、受け皿になる地方企業に対して兼業・副業人材の活用におけるノウハウ提供や実際のマッチングを支援し、これから兼業・副業を始めたい人に対しては兼業・副業実践のサポートや兼業・副業先の紹介等を行なっています。

私たちは新しい働き方を創造し、地場産業の未来を作る。
新しい働き方を実現し、日本の地場産業の成長が加速していくことが、私たちの使命です。

本制度により、受け皿となる地方企業に「兼業・副業人材の活用」という新しい概念が浸透し、企業の成長だけではなく地域全体にも還元される、そんな好循環が生まれる世界が訪れることを期待しながら、私たちにできることを一歩一歩着実に進めていきます。

辻 麻梨菜

辻 麻梨菜 (Going・Going・Localマネージャー 兼 地域活性プランナー)

山梨県北杜市白州町出身。母校の統廃合や地域のお祭りの廃止・縮小など、リアルな現実を目の当たりにし、「地元に恩返ししたい」という想いから2019年4月から東京と山梨の里帰り二拠点生活を開始。新しい働き方・暮らし方を実践しながら、同じように「地域と関わるきっかけ」を探す人と地場産業を繋ぐ「Going・Going・Local」のマネジャーとして、山梨営業・キャスト面談・サービス設計・イベント企画・メディア運営など、あらゆる業務を担当。複業でライターやコミュニティビルダー、地元・白州町の未来を考える『白州2050』など、様々な切り口で挑戦中。

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