10/5(土)若き農家の未来を考える座談会レポート

突然ですが、お野菜コーナーで並んでいるトマトを吟味して買ったのに、いざ家で食べてみたらおいしくなくてがっかり…なんて経験はありませんか?
いまや私たちの食生活に欠かせないトマトですが、本当においしいトマトに出会うのって、思いのほか難しいものですよね。

ところがこのたび、本当においしいトマトを作るスペシャリストさんに出会うことができました。
それが、50年間ものあいだトマトを作り続け、質・味ともにこだわりのトマトを栽培しているトマト農家・ヨダファームさん。
ヨダファームさんのトマトは、みずみずしくて甘酸っぱくて、安心して食べられるおいしいトマトばかり。

先日、そんなトマト作りのスペシャリストであるヨダファームさんが、トマトづくりや農業にについてざっくばらんにお話をする座談会を、ゴゴロ運営チームの辻さんとともに開催されました。
それも、この座談会はなんとおなかいっぱいのトマト料理つきです。

ゲストにはヨダファームの功刀 隆行さん。功刀さんは、農家としてトマトを育てながら青山ファーマーズマーケットで最高の野菜を直接届けたり、チャレンジを続けている農家さんです。
トマトが大好きすぎて普段は箱買いしてしまう私中神も参加してきましたので、わくわくしながらレポートしていきたいと思います。

太陽と水が育んだトマトを次世代へ。 〜若き農家の挑戦と、これからの農業〜

ゴゴロで功刀さんと出会った弊社の辻。「なにか一緒にイベントができないかな?」と考え今回のイベントを開催が決定。
辻と功刀さんがタッグを組んで、今回のイベントを実現することとなりました。
(辻ははじまり商店街さんにも所属している関係で、今回のイベントははじまり商店街主催という形で行われています。)そうしてまだ残暑の残る10月5日の夜、虎ノ門・新虎小屋にて
「太陽と水が育んだトマトを次世代へ。 〜若き農家の挑戦と、これからの農業〜」が開催されました。

会場ではヨダファーム直送のフレッシュトマトがふるまわれ、ヨダファームの野菜のおいしさを実感。
奥のキッチンでは調理担当の功刀さんの奥さまが「農家飯だから口に合うかな?」なんて笑いながら、お皿が空っぽにならないようにおいしい料理たちを振る舞ってくださいました。テーブルにはつぎつぎとトマト料理がならびました。

農家のリアルについて知る曼荼羅マップタイム

座談会中盤からはヨダファームさんや農業への理解の深まるキーワードが散りばめられた「曼荼羅マップ」に沿って、功刀さんがご自身の経験から実感していることを話してくださいました。

功刀さんの曼荼羅マップ。これに沿って座談会が進行されました。

この曼荼羅マップ、トマト農家さんが抱えるテーマに関するキーワードなんですが、どんな内容だか想像はつきますか?
ここでは、印象的だった項目をいくつかピックアップして、答え合わせしていきましょう。

「240円」
約24個入りトマト1箱の最安値。
取れすぎてしまったり、値段が安くなってしまうと1箱240円の売上になってしまったことがあり
それに功刀さんはとても驚かれたようです。

普段、食べたくても値段が高くて食べられない大好きなトマトが、そんな値段で取引されたことがあったなんて…衝撃的でした。
そんなに安い値段では、農家を続けていくのが大変だというのも実感をもってわかりました。

「意外」
功刀さん:自分も昔は、農業って、畑でトラクターかけてるイメージだったんです。
ハウスでも、嵐がきたらどきどきで眠れない夜を送るんだろうなぁとか。でも実は進化してるんですよ!
3年前の雪ではつぶれたけど、そのあと立てたハウスは雪害とかにも耐えうる普通の家レベルなんです。

なんと、30年前から雨・風・温度センサーついているそう。
「当時は最先端でな」なんて、50年間農家を続けてきたお父さんは語ってくれるそうです。お父さんの、トマトにかける想い、真剣さが伝わってきました。

そのほかにも、すごい機能がたくさん。例えば、
・温度が高い⇒網戸にしてくれる
・温度が低い⇒窓閉じてボイラー炊いてくれる
・日光が強い⇒水やりをしてくれる
・曇ってる ⇒水やりを控えてくれる
などなど。
 
人間が楽できる仕組みができていて、地味な作業だけではなく、電子制御版操作、太陽から受けるカロリーを計算する時間などもあるそうです。

このお話を聴いて、私の中の農家のイメージも、だいぶ時代遅れだったのだと気がつきました。

「かっこいい」
功刀さん:トマトとはあまり関係ないんですけど…うちにいる90歳のおばあさんが趣味でピーナッツをつくってるんです。

そう、にこにこと話す功刀さん。

功刀さん:6回もカラスに食べられちゃって、ネットを電子網に変えて、出荷もしないピーナッツのためだけにそこまでするんです。
父に『なんでそこまで?』と聞いてみたら、
『カラスに食べられたみたいでくやしい。ピーナッツをあきらめたらトマトもあきらめたと同じだ』っていうんです。
かっこいいなぁと思って…。

この話を聞いて、そういうあきらめない強さがトマト農家を50年間も続けてきた心なんだなぁ、と感じました。

「???」は参加者からの質問コーナー

座談会で出た質問をいくつかご紹介したいと思います。

「トマトにこだわる理由は?」
功刀さん:きゅうり、レタスなどもつくってはいるのですが
 あえてトマトで勝負するのは、トマトづくりを50年間続けてきて、トマトならどこにも負けない自信があるからです。
挑戦もしています。青山のニーズに合わせたり、西洋野菜に挑戦したり…。
もし、こういうの作ってほしいとかあったら言ってください!

「JAさんに持っていくのが250箱ということですが、青山に持っていくのは何箱くらいですか?」
功刀さん:青山ファーマーズマーケットに持っていくのは5~6箱です。
人件費や宿泊費合わせると赤字なんですけど、それでも青山に行くのは、人とのつながりをつくるためなんです。
普段の出荷とは違って、青山では、フィードバックが返ってくるのがおもしろいんですよね。
そういう風に、つながりを持っていくのがこれから必要だと思うんです。
本当に地味だけど、そういうのを積み重ねていきたいと思っています。

「加工品などは挑戦したりするんでしょうか?」
功刀さん:トマトは時期もので、オフ期になるとその間は何もできないため、その間をうめるものとしてトマトで加工品ができたらいいなと思って、試作を重ねているところです。

特製トマトの無水カレー・新米タイム

そして、曼荼羅マップがひと段落したところでふるまわれたのが、山梨でコメ農家を営まれている辻さんのお父さんの新米と、ヨダファームさんのトマトをたっぷりと使った、トマトの無水カレー。

ヨダファームのトマトをたっぷり使ったトマトの無水カレーと、辻さんのお父さんがつくったつやつやの新米

甘くて味が濃厚な新米と、甘酸っぱいトマト無水カレーのコンボは、ひと口に食べた瞬間から幸せに包まれました。

水を使わず野菜のうまみだけで作られたカレーはトマトの酸味、野菜の甘味、うまみがぎゅぎゅっと凝縮されていて、豚肉の柔らかさもあり、濃厚なのにさらっと食べられます。

なかなか食べる機会がないトマトの無水カレーに、参加者の皆さんも、食べた瞬間
「うまっ」「おいしい」
など、口々に声をあげていました。

途中、あまりのおいしさにカレーのお代わり希望者が殺到。
3度目のおかわりタイムでは、カレーをめぐってじゃんけん大会が発生する場面もありました。

トマトカレーをかけたじゃんけんタイムの様子


ネーミングとこれから

トマトカレーを一通り味わった後は、曼荼羅アートの「ネーミングとこれから」について話し合いました。

功刀さんご夫妻と参加者のみんなで、ヨダファームをどうしたら次世代に引き継いでいくことができるトマト農家にできるか?について、熱く議論が行われました。

ヨダファームのトマトにつけるオリジナルネーミングを考えたり、本質的にどうしたらファンになってもらえるのか?どうしたら、功刀さんの想いをたくさんの人に知ってもらえるのか。

様々な建設的意見飛び交う中で、トマト農家を次世代に引き継ごうと奮闘している功刀さんや、ヨダファームを50年間営んできたお父さんの想いも知り、議論は熱を帯びました。


議論が繰り広げられる様子

ヨダファームのトマトをおいしさと、これからどうやってこのトマトを広めていくかの議論に、会場は大いに盛り上がりました。

白熱するうちにマーケティングの専門用語が飛び交い、様々なアイディアが飛び出しました。
「ここにいるひとりひとりがヨダファームの未来を想い、意見しているのだな」
そんなふうに感じられる場でした。
帰りにはヨダファームさんから、新鮮なトマトをお土産としてご用意いただき、ひとりひとりに手渡しで配ってくださいました。
参加者の人たちに少しでも楽しんでもらおうという功刀さんご夫妻の想いが伝わる時間でした。

まとめ

今回の座談会は、ヨダファームさんのトマトへの想いや真摯な姿勢に場のメンバーが団結して議論を行っていく様子が印象的でした。
また、もうひとつ印象的だったのがイベント全体が参加者にへのホスピタリティにあふれていたことです。
お料理はもちろん、お土産のご用意、そして参加者へ常に感謝を表すその姿勢に、参加者の方々から「応援したい」という想いが芽生えていたと感じます。
トマト大好きな私も、おいしいトマトを育てることがどれだけ大変か、ヨダファームさんがトマトをどんな想いで育てられているのかを知ることができ、これから食べるのならば、そんな風に大切に育てられたお野菜を食べていきたいと思いました。
50年間の想いがこもったおいしいトマトを、ありがとうございました。

中神 早紀

中神 早紀 (クリエイター)

国際教養大学を卒業。大学時代リトアニアに交換留学し多様な国出身の留学生と関わりを持ち、豊かな個性を持つ人々に出会う。帰国後、日本と海外の豊かな資源を持つ人同士がつながる世界の可能性を見出す。語学のほかにツールを手に入れたいと思いIT企業に入社。システムエンジニアとして勤務。趣味で始めたカメラで、カメラを通して世界を切り取ることの面白さに夢中になり、これが知らない世界を伝える手立てになると気がつく。2019年10月トレジャーフットの一員となり、豊かな資源を持つ人同士が繋がることによって生まれる創造の可能性を広げていきたいと思い、活動中。

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