複業の実践:地域の仕事を首都圏から。東京で積んだキャリアを地域に還元し、ITで人の暮らしを豊かに。

今回はゴゴロのキャストさんインタビューとして、ITコンサルタントの中井大さんにお話を伺いました。
中井さんは学生時代の原体験から「ITは人の暮らしを豊かにできる」という気づきを得て、地元の経済を盛り上げるべく東京で経験を積み、今のキャリアがあるといいます。
今回は、そんな中井さんに今の働き方にいたるまでの経緯や、ゴゴロで活動してみた感想を伺いました。

■お話を伺った人
中井大さん
北海道ニセコ地域の蘭越町出身。小学校入学前からワープロに慣れ親しみ、学生時代からIT関連のボランティアや仕事を行う。大学時代までを北海道で過ごした後、東京のIT企業に勤務。民間企業の仕事から、通信の業界団体を通じて、国とも連携した仕事まで、様々な経験を網羅。現在は、培った経験を地域に還元するという想いをもとに多方面で活躍中。

なぜいまの働き方に至ったのか。原点は学生時代の原体験

ーー現在はどういったお仕事をされているんですか?

中井さん:ITコンサルタントとして、会社さんの事業の下支え役をしています。例えば、スタートアップ企業で選任担当者が不在である、企画、営業、管理といった業務を代行したり、新規事業の立案やカスタマーサクセス部門の設立など、社内で足りていないことを作り上げるお手伝いしています。

ーー今のお仕事に至った経緯を教えてください。

中井さん:今の仕事や活動をするきっかけとなったのは、高校生の時、高齢者にワープロを教えるボランティアをしたことです。
僕は幼少期からワープロを自由に使っていい環境にいて、小・中学校にワープロ持ち込んで生徒会の仕事をやったりしていたのですが、高校生の頃「地元の高齢者向けにワープロを教えてくれないか?」と打診があり、近隣に住むご夫妻を伺うこととなりました。そのご主人へ、マンツーマンでワープロ教える事となりました。
ご主人は身体を思う通りに動かせない持病をお持ちでした。定年退職を迎え余暇をお過ごしの中、俳句や短歌を書いて新聞や地元の会報へ投稿する事を楽しみにして活動しておられましたが、先の病により執筆活動も難しくなってきた所でした。
そこでワープロを購入し筆の代わりにしようと思ったものの、一般のマニュアルではご主人のやりたいと思う「新聞社が指定する方法で葉書を印刷して投稿したい」という希望の操作には程遠く、気疲れしておられました。そこで私は操作方法を定め葉書の雛形を作る事で、必要のない操作を簡略化しお教えした所、めきめきと操作が上達され、半年もしない間にワープロの操作のみで作品が投稿できるようになられました。その後、ワープロで俳句や短歌を投稿し始めてから何度も新聞に掲載されたりして、生きがいを見つけていただけたんです。
「ITって、人をいろんな形で豊かにできるものなんだ」とそのとき実感しました。
それで、ITを極めたらもっといろんなことできるんじゃないかと思ったことが、その後のキャリアを積むきっかけになりました。

ーー中井さんの原体験なのですね。地元から東京に出てくるのには、なにかきっかけがあったのですか?

僕は地元にいるころから、地元の地域経済は衰退していくかもしれないと、なんとなく想像していました。上京した当時は「20年しっかりと東京で経験を積み、その先は地域経済に寄与する仕事をしよう」と決めていました。

ーー実際のキャリアは、どのように積まれたのですか?

中井さん:現在、IT業界で17年間働いているのですが、15年間は東京で、2年間は福岡で働きました。東京で最初に関わったのは、飲食店の広告事業です。キャリア形成の最初の段階で地域経済を知る経験ができたのは大きな礎となりました。飲食店のオーナー様が思う情報を広告媒体上で情報発信のお手伝いしたのが最初の仕事です。その後、「放送と通信の融合」というキーワードの元、ケーブルテレビに関する仕事や、フューチャーフォン、スマートフォンのアプリやサービス開発を経て、インバウンド関連事業や、通信業界団体の仕事を通じて、災害時Wi-Fiの策定などに携わりました。
地域経済から全国の取り組みまで出来た事で、地元に還元できるだけの経験と仕事は、ある程度積むことができたかなと思っています。

地域と繋がる仕事をしたきっかけは、福岡での2年間

ーー中井さんが関わってこられた地域と繋がる仕事についてもお聞かせいただきたいです。

中井さん:地域経済に貢献しようと始めた一番最初の仕事は、2011年に福岡で働いていた時のことです。
私が福岡へ赴任した当初、地元企業の方とお話ししたのですが、皆、地元の優秀な学生さんは東京に行ってしまうという課題を抱えていました。そこで、IT業界は地域に関わらず東京と同じ仕事が福岡でもできる事を知ってもらおうと思い、地元の優秀な学生さんに、当時所属していた企業の仕事を一緒に進めるプロジェクトを開始しました。 具体的には、スマホアプリのスタートアップをはじめたいという学生たちに無償でコワーキングスペースを貸し、代わりに彼らのエンジニア能力を活かして手伝ってもらう取り組みを行いました。学生は仕事を通してプロの力がつきますし、両者にとって良い活動ができました。その活動は福岡中に浸透し、最終的には地元の企業に就職する事につながりました。当時参加した学生さんの中には、いま名だたるIT起業で働いている子もいます。うれしいな、と思いますね。
地域と関わる活動が本格化したのは2018年からです。
「北海道移住ドラフト会議」(移住やUターンを検討している方を選手とし、選手を北海道のおもしろい・元気な自治体や企業(球団)が指名し、交渉権を獲得する移住マッチングイベントです。)に参加したことがきっかけでした。1年目に指名頂いた自治体とは、今でも関わらせて頂いていますし、2年目に指名いただいた自治体とも、新しい取り組みを進めています。まだキャリアは17年なので、当初目標としていた20年からは少し早く到達できた気がします。

いま、地域に必要なのはよろず屋のような役割

ーー地方での活動は最近本格化されたとのことですが、ゴゴロと出会ったきっかけはなんだったのでしょうか。

中井さん:たまたまゴゴロの活動を拝見し連絡を取った所、辻さん(ゴゴロマネージャー)から電話を頂きました。当時私が担当していた地方の食を地元に広めるイベントに参加いただくなどし、両者の考えが近い事が分かり意気投合をしました。

ーー実際にゴゴロで活動してみていかがでしたか?

中井さん:今回、私は「シャルマンワイン」というワイナリーさんのWebサイトを、ペライチ(Webサイトで情報発信を可能にするサービス)を使って作成しましたが、私自身、ペライチの認定サポーターであった為、関わらせて頂きました。 ペライチの創業メンバーの意思とゴゴロが目指すところが近い事もあり、地域の情報発信の事例を自ら行う事で、両社の橋渡し役ができればと考えています。

ーー今後、ゴゴロにどういったことを期待されていますか?

中井さん:ぜひ、首都圏と地方をつなぐための役割になって、一番気軽に相談したり情報を持ち込める場所になってほしいです。地方には、ある事を実現したいと想いを強くもっていたり、ITについて興味を強く持つ方がおられるものの、その事を実現してあげる身近な相談役がいないと思っています。他社の地方創生事業だと、社会問題を解決するなどスケールが大きすぎたりして、まだまだ相談の敷居が高いのですが、地方が本当に困っていることは、ご自身の商売や仕事の業務改善、認知度向上など、もっと具体的な事例が多数ある事なんだと感じています。その人たちにとっては、よろず屋的な敷居低くなんでも相談できる場所が必要なんです。ぜひ、ゴゴロには地方の方々によりそう存在になって、日本の経済の立役者になっていってほしいです。

17年のキャリアのその先へ。中井さんの今後目指す姿

ーーWeb制作、マーケティング、コンサルティングと幅広く手がける中で、今後地域との関わりを含めてどうしていきたいですか?

中井さん:そうですね、想いとしては2つあります。
1つ目は、仕事をする地域に実際に行った後、仕事をしたいと思っています。
テレビ会議など距離を問わないコミュニケーションはいつでも使う事ができるのですが、実際の問題解決にはご本人と対面して話を聞く事が大変必要だと思うんです。仕事に関わらせて頂く地域を知らないと、その仕事はできないと思っています。今も自分が仕事で関わる地域には足を運んだりするのですが、それは大切にしていきたいと思っています。
2つ目は、自分のやり方を押しつけるのではなく、相手の「これがやりたい」を叶えてあげる存在でいたいと思っています。
例えば最初にお話ししたワープロで川柳・俳句を作成されたご主人がやりたかった事は「ワープロの打ち方を覚えること」ではなくて、「川柳・俳句を葉書に印刷して投函する事」でした。もしワープロの使い方を一生懸命教えても、ご主人の目的は違うのだから本人はつらくなってしまいますよね。ツールを使う事や、既存ツールをおしつける事が、最終的な答えになってはいけないと思うんです。だから「これがやりたい」を叶えてあげるひとでありたいと思います。「やりたい」を叶える秘密道具を創り出してあげられるような、ドラえもんのような存在になりたいですね。

インタビューを終えて

インタビューを通して、中井さんが関わるお仕事では誰にとってもプラスになるお仕事をしていると感じました。
インタビュー中も、ゴゴロの役に立つ情報を提供してくださる中井さんを見て「周りにいる人に幸せになるための道具を与える人」だと実感しました。
今後も誰かの「ドラえもん」のような存在として、多くの人の困りごとを解決に導いていく、そんな中井さんの姿がイメージできたインタビューでした。
▼中井さんが制作されたHPはこちら
https://www.charmant-wine.com/

中神 早紀

中神 早紀 (クリエイター)

国際教養大学を卒業。大学時代リトアニアに交換留学し多様な国出身の留学生と関わりを持ち、豊かな個性を持つ人々に出会う。帰国後、日本と海外の豊かな資源を持つ人同士がつながる世界の可能性を見出す。語学のほかにツールを手に入れたいと思いIT企業に入社。システムエンジニアとして勤務。趣味で始めたカメラで、カメラを通して世界を切り取ることの面白さに夢中になり、これが知らない世界を伝える手立てになると気がつく。2019年10月トレジャーフットの一員となり、豊かな資源を持つ人同士が繋がることによって生まれる創造の可能性を広げていきたいと思い、活動中。

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