イベントレポート:5/29(金) withコロナを生き抜く経営戦略#4 有事に備える事業継続計画(BCP)策定の基礎

5/29(金)、「withコロナを生き抜く経営戦略」の第四回目として、現在独立し、人事労務、工場での労働安全衛生、環境管理、防災、BCP策定、コンプライアンス等のリスク管理など幅広く支援を行われている荒井 真澄さまをゲストにお迎えして「有事に備える事業継続計画(BCP)策定の基礎」セミナーを実施しました。

◾︎今回のイベント登壇者プロフィール
荒井 真澄(あらい ますみ)
総務コンサルタント。株式会社神戸製鋼所とグループ会社のコベルコ建機株式会社にて、総務・人事部門を中心に勤務後退職。人事労務、工場での労働安全衛生、環境管理、防災、BCP策定、コンプライアンス等のリスク管理の他、事業所移転、遊休地売却、記念行事等のプロジェクトまで総務人事部門での幅広い分野の支援が可能。行政書士として相続遺言、会社設立、営業許認可などの業務も行う。

先が見えない、未曽有の新型コロナウイルスをはじめ、台風や豪雨、震災など、大きな緊急事態を経て、BSPの重要性は年々高まっているといいます。阪神淡路大震災、東日本大震災の被災企業として復旧・復興関連業務を担当されてきた荒井さま。今回は、そんな荒井さまの言葉で印象に残った点をまとめていきたいと思います。

そもそも、BCPとはなんなのか?

BCPとは、Business Continuity Plan いわゆる事業継続計画のことです。
荒井さまによると、「緊急事態に遭遇した場合に、事業資産(人、モノ、カネ)の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続、早期復旧ができるよう、平時に行うべき活動や緊急非常時における事業継続のための方法、手段をあらかじめ取り決め、それを文書化したもの」。

よくいわれる防災計画との違いについてもお話しいただきました。
防災計画が被害の防御・軽減が目的なのに対して、BCPは被害後の事業継続・早期復旧も目的に含まれるということです。
BCPに「しなければいけない」という決まりはありませんが、上記の目的を果たすために、各社で以下のようなサイクルを回して取り組んでいくことが一般的だそうです。

BCPを検討するときに、まずやらなければならないこと

BCPを検討する際、優先順位が高く、最初に取り組むべき点はどこなのでしょうか。
荒井さまは、BCPを検討する際に、まずやらなければならないことを何点かお話しされていましたのでここにポイントをまとめていきます。

1.BCP策定事務局の設置
 ・社長をトップにした事務局を設置する
 ・定期的な進捗ミーティングの実施

2.初動対応体制の確立
 ①人命の安全確保:安否確認や、安否確認ルートの確定と、訓練など。
 ②緊急対策本部(本社・現地)の設置:社長をトップとした体制
 ③被災情報の把握・情報共有

やはり、事前にすぐに対応できるチーム(事務局)を作っておくことや、人命を第一に考え動くことができる体制づくりが肝になってくると感じました。いざというときに社員の安全を守るべくすぐに動けるように、対策しておきたいですね。

BCP関連おすすめの制度ー事業継続力強化計画認定制度ー

セミナーの後半、BCPのアウトラインをつかむことができるおすすめの制度をご紹介いただきました。それが、事業継続力強化計画認定制度です。ここでは紹介いただいた概要を記載いたします。詳細は、URLよりご覧ください。

<認定対象者>
防災・減災に取り組む中小企業事業者

<記載項目>
①目的の明確化 
②自社拠点の自然災害リスク認識と被害想定策定 
③発災時の初動対応手順の策定
④ヒト、モノ、カネ、情報を災害から守るための具体的な対策
⑤計画の推進体制
⑥取り組みの実効性を確保できる取り組み(訓練実施、計画の見直しなど)
(⑦連携して取り組む場合、連携に向けた関係各社の合意)

<認定を受けた企業に対する支援策>
①低利融資等の金融支援
②防災・減災設備に対する税制措置
③補助金の優先採択
④連携する企業や地方自治体等からの支援措置
⑤中小企業庁HPでの認定を受けた企業名の公表
⑥認定企業のロゴマークの活用

詳細情報はこちらからご覧ください。

BCPにおけるコロナと自然災害の違いは?

大きな震災をご経験されている荒井さまに、今回のコロナのような感染症に関して、自然災害ケースとの違いもお話しいただきました。ポイントごとに抜き出して記載していきます。

被害・リスク特徴:自然災害のように物的、社会インフラへのダメージはなく、ヒト、カネへの影響がメインである。
被害・リスク評価:コロナは被害期間が不確実なため、絶対値での時間軸による影響評価、目標許容停止時間、目標復旧時間の設定が難しい。
事前対策面:コロナでは人的資源、職場環境面(テレワーク等シミュレーション)での対策が主。テレワークによる二次的リスク(情報漏洩、就業管理ルールの見直し等)への備えも必要。
発生後対策面:コロナでは感染状況、段階ごとに分けた対策を要する。営業規制への対応として、公的融資、補助金等の最大限の活用を実施。

コロナの感染症に関しては、「先の見えなさ」が難しい点となっています。BCPサイクルを基本に、上記のようなポイントを踏まえ、各社の状況に合わせてBCP策定を行っていく必要があるそうです。

曼荼羅マップQ&Aコーナー

今回は、事前に気になる切り口の質問を曼荼羅マップにまとめ、これらの質問に荒井さまにお答えいただきました。いかにお答えいただいた内容を記載します。

BCP策定に必要な人材
 ➡セミナー内でも話している通り、事務局の方は大事。事務局の方は、「けん引役、取りまとめ役」として周りをひっぱっていけるような、優秀な方を選定する必要がある。適当な人材を配置をすると失敗してしまう。課題に対して「みんなで協力しよう」とフランクに話せるような方が必要。
手間がかかるのはどこ?(手間をかけるべきところはどこ?)
 ➡リスクの洗い出しを密にしたほうがいい。どんなことが起こりうるかというケースをすべて抽出し把握しておくことが重要。
もっと簡単にできないの?
 ➡BIAやリスクアセスメントなどをどれだけやるかというところは、全体のバランスを見ながら自社で決めていただける。ここでハードルを下げることができる。
企業規模によって注意すべきポイント
 ➡企業規模は人数ではなく「事業所の拠点数」で見て、事業所が多いエリアは被害想定の点で注意する必要がある(拠点が偏っている場合は分散させるなど)。人数が多い場合は安否確認をスムーズにできるよう、システムを入れるなどの対策があるとよい。
ご経験されてきた東日本大震災などの際は、事前に安否確認システムを定めていたのですか?
 どのように安否確認をしていたのですか?
 ➡阪神淡路大震災のときは、システムはなく、携帯も普及していなかったので全員の安否確認に膨大な時間がかかった。人づてに伝えてもらって、その人から連絡したりした。
  東日本大震災のときは、携帯は普及していたが繋がらず、やはり少し時間がかかった。安否確認は、一つの手段ではなく、SNSを使うなど他に複数の手段を決めておき、社員から連絡をもらうように訓練して準備しておくことが重要。
・通常BCP策定にかかる費用
 ➡事業規模と、どこまでやるかにかかってくる。マンパワー(人件費)のかけ方や外部にどこまでやってもらうかによって異なる。
・コロナ対応
 ➡基本的は前述の通り。コロナのBCPは時間軸が読めないから難しいので、「緊急事態宣言が発せられたら」などの段階に分けて対策を考えるなどの工夫が必要。

イベントを終えて

数々の大震災の被災企業として復旧・復興関連業務を担当されてきただけではなく、人事労務全般や地域行政との関わりを持つなど、幅広い経験をされている荒井さま。今回お話しいただいた、荒井さまのご経験に基づく生きた知識は、いままさに必要とされている内容で大変心強く、多くの方に知っていただきたいと思いました。BCPの実践に苦戦している皆さまは、荒井さまにご相談いただくことで、実践的BCPの策定にぐんと近づくのではないでしょうか。

今後も、今必要とされている情報をお届けするために、引き続きオンラインイベントを開催していきますので、気になる方はぜひチェックしてみてくださいね。なお、当日の様子は以下の動画からもご覧いただけます。

中神 早紀

中神 早紀 (クリエイター)

国際教養大学を卒業。大学時代リトアニアに交換留学し多様な国出身の留学生と関わりを持ち、豊かな個性を持つ人々に出会う。帰国後、日本と海外の豊かな資源を持つ人同士がつながる世界の可能性を見出す。語学のほかにツールを手に入れたいと思いIT企業に入社。システムエンジニアとして勤務。趣味で始めたカメラで、カメラを通して世界を切り取ることの面白さに夢中になり、これが知らない世界を伝える手立てになると気がつく。2019年10月トレジャーフットの一員となり、豊かな資源を持つ人同士が繋がることによって生まれる創造の可能性を広げていきたいと思い、活動中。

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